ダブルイメージ印刷
照光表示型のパネル向けとして、1枚の透明なパネル上の同じ場所に、2種類の意匠を切り替えて表示させる印刷方法です。表示領域の省スペース化、意外性のあるデザインなどが可能です。"ON - OFF"、"稼働 - 停止"、"上昇 - 下降" など対となるような文字のインジケーションに適しています。 (2016.3.5:名称を「補色ダブルイメージ印刷」から改めました)
構造
表示構造としてはパネル裏面からLEDなどの光源によって照光し表示する、照光表示型のパネルです。意匠を切り替える原理は、色の補色の関係を用いています。例えば、光源の色とパネルに印刷されている色が同系色であれば、印刷層は光を通しますが、光源と印刷色が補色の場合には印刷層が光を遮ります(※1)。代表的な印刷構造を下図に示します。
- 基材:アクリル, PC, PET などの透明樹脂材が主に使われています
- スモーク印刷部:下層の意匠パターンを隠し、照光時のコントラストを強調します。
- 意匠1:本図の場合、照光色が赤の時に、文字を表示する印刷層です。印刷色が(補色である)緑色で行う事で赤色光を吸収し、印刷の無い文字の部分("STOP")が発光表示されます(※2)。
- 意匠2:意匠1と同様に、照光色が緑の時に、文字を表示する印刷層です(本図では、緑色光で"START"と表示)。
- 拡散印刷部:光源の光を拡散させて、発光表示する文字を均一な輝度に近づけます。
- 光源部:主にLEDを使用する事が多いですが他の光源でも使用可能です。但し、切り替える2種の光色は、補色の関係である事が必要です(※3)。
【注記(※)】
- 理論上の例です。実際には、光源の強さやインクの物理的な面での濃さ等の要素によって遮る力(隠蔽力)は変動します。
- 意匠1と意匠2とを重ねて印刷した場合、二種の抜き文字の重なり部分は、全く印刷されない部分になります。照光時には、この箇所の輝度が高く、他の照光部分との輝度差が生じます。この現象によって表示される文字の視認性の低下を招く事があります。弊社ではこの輝度差を補う、あるいは生じさせない印刷方法を考案しています。
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二種の光色は、出来るだけ正しい補色位置の波長である事が望ましく、色相のズレはインク層による、透過と隠蔽に無理が生じ、照光時の見栄えの品質低下に繋がります(例えば照光時に、表示しない側の文字が、薄く浮き出てしまう、など)。
利点
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表示エリアの省スペース化:同一面、エリアに二種の情報を表示する事ができるので、表示エリアの省スペース化が可能です。装置の小型化など、表示部にスペースが裂けない場合、有効な表示方法です。
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表示装置の低コスト化:多数の情報表示ではなく、二項対立的な文字などを切り替え表示する用途であれば、LCDパネル、などを設置するよりは、安価で単純な設計が可能です。
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意外性のあるデザイン:裏面照光型の表示方式なので、隠し印刷などと組み合わせて、意外性のあるデザインが可能です。例えば、通常(非照光時)はヘアラインメタリックや木目調の表面であり、照光時には、二種類の文字やイラストを切り替えて表示するようなパネル制作が可能です。
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サンプルギャラリー
2項対立の表示切り替えモデル
警告や状態などの案内表示器を想定として、サンプルモデルを製作しました。赤と緑、橙と青の2種の組み合わせを用いています。赤色は「危険な状態」緑は「安全な状態」を想起しやすく警告表示灯などに向いています。橙と青はそれぞれが等価な重要度を持つ様な(単に状態の異なるもの)を表示するような用途に適しています。
表現効果としてダブルイメージ印刷を利用したサンプルモデル
2項対立的な切り替え表示ではなく一つのデザインイメージを表示するサインボードとして製作しました。外観が変化する表現効果はダブルイメージ印刷の原理を用いています。尚、光源をエッジ入光の導光板とする事で、薄型パネルのモデルとしました。